ランダム化の過程から生じるバイスリスク
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1.1 割り付け配列はランダムか?
・コンピュータ生成ランダム配列ならYes
・封筒法も、最小化法も多くの場合Yes
・単にランダム化したという記述しかない場合はNo information
・信頼できる研究グループの場合はProbably yesも可"
1.2 割り付け配列は参加者がエンロールし介入に割り付けられるまで隠蔽(concealment)されていたか?
・登録センターで管理されている場合Yes
・中身が見えない封筒で番号で管理され、投薬も番号しかわからない場合Yes
・ランダム化したという記述しかない場合No information
・担当者あるいは参加者が次の割り付けを知ることができたと疑われる場合No"
1.3 介入群間のベースラインの不均衡はランダム化の過程の問題を示唆するか?
・偶然による不均衡と思われる場合はNo
・P<0.05でも差が小さな場合は偶然による不均衡と考えNo
・企図された割り付け比からかなりずれていたり、アウトカムに影響するベースラインの因子に偶然以上のずれがあったり、介入の効果の推定に影響すると思われる大きな不均衡がある場合、測定されるアウトカムにベースラインで不均衡がある場合はYes
逆に完全に近い一致の場合もYes
・十分な情報が得られない場合はNo information
・ベースラインの不均衡があるからと言って1.1および1.2の評価を変えることはしないこと(独立した項目)
・何らかの理由でランダム割り付けに失敗した場合、ベースラインの予後因子を調整する方法が用いられている場合ROBINS-Iを用いた方がよい
治療企図からの乖離によるバイアスリスク
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Part 1:
2.1 参加者は試験期間中割り付けられた介入に気付いたか?
参加者が自分に割り付けられた介入を知ることで、健康に関連した行動を変える可能性が高まる。
プラセボやシャム手術などで盲検化することはその様な行動の変化を抑制するであろう。
もし、参加者が特定の介入によると分かる副作用や毒性を経験することが起きたのであれば、YesまたはProbably yesとする。
2.2 介入を提供する医療者は試験期間中参加者に割り付けられた介入に気付いたか?
医療提供者が割り付けられた介入を知ることで、介入の実行やプロトコールにない介入の実施が群間で違ってくるかもしれない。
盲検化はそれを抑制する。
もし、特定の介入による副作用や毒性が起きたと医療提供者が分かった場合、(どの介入か分かってしまうので)、Yes またはPobably yesとする。
もしコンシールメントが行われなかった場合、医療提供者が割り付けられた介入に気づいた可能性は高まる。
2.3 2.1または2.2でY/PY/NIの場合:企図された介入からの乖離は試験の文脈から生じたか?
参加者が臨床試験に参加してもしなくても実行したかもしれない健康に関する態度の変化であれば、試験の文脈から生じたものではない。
もし、対照群に割り付けられたことを知ったために、他の治療を試したりした場合は、試験の文脈から生じたものである。
・プロトコール通りの実行をしなかったり、プロトコールでは認められていない治療を受けたりしたことが、臨床試験の文脈から生じたというエビデンスがあるか、そう信じるだけの強力な理由がある場合は、
YesまたはProbably yesとする。
・たとえ、プロトコールからはずれた治療を受けたり、アドヒアランスが悪くなったとしても、臨床試験の文脈とは関係なく起きたのであれば、NoまたはProbably noとする。
・プロトコールに沿って、副作用や毒性で服薬を中止した場合は、NoまたはProbably noとする。
・もし、特定の介入によるとわかる副作用や毒性のため、盲検化が破られた場合でも、割り付けられた介入からの変更が臨床試験のプロトコールとは違っており、なおかつ、臨床試験の文脈から生じた場合だけ、YesまたはProbably yesとする。
・プロトコール違反が臨床試験の文脈から生じたかどうか記載されていない場合、No informationとすることは適切かもしれない。
2.4 2.3でY/PYの場合:乖離はアウトカムに影響したと思われるか?
割り付けられた介入にプロトコールと異なる変更があって、試験の文脈からそれが生じたと思われる場合、アウトカムに影響したかどうかを評価する。
2.5 2.4でY/PY/NIの場合:企図された介入からの乖離は群間でバランスがとれているか?
割り付けられた介入にプロトコールと異なる変更があって、試験の文脈からそれが生じたと思われる場合、
その変化が群間で異なる場合、アウトカムに影響した可能性が高くなる。
Part 2:
2.6 介入への割り付けの効果の推定に適切な解析が用いられたか?
治療企図解析(Intention-to-treat, ITT, analysis)または改変治療企図解析(Modified Intention-to-treat, mITT, analysis)はどちらも適切である。
単純なPer-protocol analysis(割り付けられた介入を受けられなかった者を解析から除外する)、あるいは、As treated analysis(参加者を割り付けられた介入ではなく、実際に受けた介入で群分けして解析する)は
不適切と考えるべきである。
ランダム割り付け後に適格症例を除外して解析する事も不適切であるが、ランダム割り付け後に不適格例を除外することは(適格性がランダム割り付け後まで確定できず、介入の割り付けによって影響されない場合)、適切とみなせる。
2.7 2.6でN/PN/NIの場合:ランダム化された群の参加者の解析の失敗は(結果)に大きな影響を与えうるか?
この質問は、不適切な介入群として、あるいは、解析から除外された参加者の人数が結果に大きな影響を与えるほど多かったかを問うものである。
一定の人数を指定ことは困難であり、たとえ5%程度でも、アウトカムが低頻度であれば、また、予後因子と強く関連して除外が起きれば、結果には大きな影響がある。
アウトカムデータの欠損のため生じるバイアスリスク
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3.1 このアウトカムデータはランダム化されたすべてのあるいはほぼすべての参加者に対して得られたか?
治療効果に対する企図の解析のために適切な集団はランダム化された全症例である。
ほぼすべてという場合は、アウトカムデータの欠損が介入の効果の推定値に影響しないほど小さいと解釈されるべきである。
連続変数アウトカムの場合は、参加者の95%のデータが得られれば多くの場合十分と考えらえる。
二値変数アウトカムの場合は、必要な割合は、イベントのリスクと直結している。もし、観察されたイベント数がアウトカムデータ欠損の症例数よりずっと多ければ、
バイアスは小さくなる。
アウトカムデータの欠損について情報が得られない場合は、No informationとする。この場合、通常アウトカムデータ欠損による高バイアスリスクという判定になる。
この質問では、補完されたアウトカムデータはアウトカムデータ欠損として扱う。
3.2 3.1でN/PN/NIの場合:結果がアウトカムデータの欠損でバイアスを受けていないエビデンスがあるか?
結果がアウトカムデータ欠損によりバイスの影響を受けていないというエビデンスは、
(1) バイアスを補正する分析方法、または (2) 感度分析により、アウトカムと真の値との関係についてのもっともらしい仮定の範囲内で 結果がほとんど変化しないことを示すことから得られる。
しかしながら、「最後の観察値を用いる方法」、介入群にのみ基づく「多変量補完法」がアウトカムデータ欠損によるバイアスを修正できると思うべきではない。
3.3 3.2でN/PNの場合:アウトカムの欠損がその真の値に依存する可能性があるか?
もし、フォローアップの中断(脱落)あるいは研究からの離脱が参加者の健康状態と関連しているならば、アウトカムの欠損がその真の値に影響を受けている可能性がある。
しかしながら、すべてのアウトカムデータ欠損の理由が記録されており、それが、アウトカムと関連ないのであれば、アウトカムデータ欠損によるバイアスリスクは低いであろう(例えば、測定機器の不調あるいはルチンのデータ収集の中断などの場合)。
時間-イベント分析の場合、参加者の研究からの離脱は打ち切り例となるが、フォローアップのデータの一部は分析に含まれるとしても、これらの例はアウトカムデータ欠損として扱うべきである。なお、CONSORTのフローダイアグラムでは、その様な症例を解析に含めるものとして扱うことに注意する。
3.4 3.3でY/PY/NIの場合:アウトカムの欠損がその真の値に依存していたか?
この質問は、アウトカムの欠損がその真の値に依存しうる状況(Some concernsの判定)と、アウトカムの欠損がその真の値に依存していたであろうという状況(High risk of bias)を区別するものである。
以下の5つの場合Yesとする:
1.アウトカムデータ欠損の症例の割合が群間で異なる。
2.アウトカムデータ欠損の理由についての記述からアウトカム欠損がその真の値に依存しているエビデンスが与えられる。
3.報告されているアウトカムデータ欠損の理由が群間で異なる。
4.臨床試験の行われた状況からアウトカムの欠損がその真の値に依存している可能性が考えられる。例えば、統合失調症では症状が持続すると脱落が起きやすいことは広く認められている。
5.時間-イベント分析では、薬物毒性のため、癌の臨床試験で、セカンドライン治療に変更された場合などで、割り付けられた介入を中止したり変更した場合打ち切り例として解析される。
もし、参加者の特性の分析で、アウトカム欠損とその真の値の関係が説明できる特性が見つかったような場合は、Noとする。
アウトカム測定におけるバイアスリスク
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4.1 アウトカム測定法は不適切だったか?
この問いは評価を企図したアウトカムの測定に不適切なアウトカム測定(データ収集)の方法を同定するのが目的である。
この質問は設定されたアウトカムが適切かどうかを評価することが目的ではない(例えば、代理アウトカムなど)。
研究開始前に定義され設定されたアウトカムの場合は、答えは通常NoまたはProbably noであろう。
アウトカム測定法が不適切な場合は、YesまたはProbably yesとする。例えば、
(1)ありうる介入の効果の測定値の範囲から外れた測定感度の方法を用いている場合。
(2)アウトカム測定機器の精度が低い場合。
4.2 アウトカム測定・確認は介入群間で異なるか?
比較される時点で同じ測定方法、同じ閾値が用いられているか。受動的なアウトカムデータ収集の文脈における’診断検出バイアス’のため、あるいは、介入が追加的な受診などアウトカムイベントの再測定の機会を含むような場合、群間で差が生じる可能性がある。
4.3 4.1と4.2でN/PN/NIの場合:アウトカム測定者は研究参加者が受けている介入に気づいたか?
もし、アウトカム測定者が介入について盲検化されていれば、Noとなる。
患者報告アウトカム(PRO)の場合、アウトカム測定者は試験参加者となる。
4.4 4.3でY/PY/NIの場合:アウトカムの評価は受けている介入を知ることで影響を受けたか?
介入の割り付けを知ることで、(痛みのような)参加者が報告するアウトカム、何らかの判断が必要な観察者が報告するアウトカム、介入提供者の決断がアウトカムなどは影響を受ける。
4.5 4.4でY/PY/NIの場合:アウトカムの評価は受けている介入を知ることで影響を受ける可能性があるか?
この質問は、次の二つの状況を区別するためのものである:
(i) 介入を知ることで、アウトカム測定が影響受けた可能性があるが、実際にそれが起きたことを信ずるに足る理由がない場合(Some concernsと判定する)。
(ii)介入を知ることで、実際にアウトカム測定が影響を受けた可能性が高い場合(Highと判定する)。
その介入の益のアウトカム、あるいは、害のアウトカムのいずれかが強く信じられる時、受けた介入を知ることによるアウトカムへの影響はより起きやすい。
介入が、ホメオパシーの試験で患者報告症状がアウトカムの場合や、理学療法で機能回復を理学療法提供者が測定するような場合が例として挙げられる。
報告結果の選択におけるバイアスリスク
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5.1 この結果をもたらしたデータは盲検化解除前に解析のためにアウトカムデータが得られる前に最終化された事前の解析計画に従って解析されたか?
もし、研究者の事前に定義された企図が十分詳細に得られるなら、計画されたアウトカム測定と分析と出版された報告に示されているものを比較することができる。報告された結果が任意に選択されたものである可能性を避けるには、分析の企図の最終化は研究者に盲検化されたアウトカムデータが開封される前に行われている必要がある。
盲検化されたアウトカムデータが得られる前に分析計画が変更されたり、例えば、データ収集用の装置の故障のような、結果と明らかに関係ない変更は報告結果の選択におけるバイアスの懸念には繋がらない。
5.2 評価される数値結果は、そのアウトカムドメインで多数の適格なアウトカム測定(尺度、定義、時点)から、結果に基づいて、選択された可能性があるか?
主要アウトカムが複数の方法で測定され、例えば、Visual Analogue ScaleとMcGill Pain Questionnaire)、複数の時点で測定されている場合、任意に選択した測定だけを報告しているとバイアスリスクはHighの可能性が高くなる。
しかし、RoB2.0の使用者が各自の目的のために、報告されているアウトカムから特定のものを事前に選択している場合は、問題とはならない。
もし、研究プロトコールで設定されていた測定や分析の計画の内、一部しか報告されておらず、研究者の仮説に有利な項目だけが選択されているような場合は、YesまたはProbably yesとする。
もし、研究プロトコールで設定されていた測定や分析の計画がすべての計画されたアウトカムで実行されていたり、アウトカム測定法がひとつだけであったり、同じ試験の中でアウトカムの測定がばらばらであっても、その理由が述べられており、結果に影響を与えない場合は、NoまたはProbably noとする。
もし、分析の企図が分からなかったり、詳細な記述がない場合で、いくつかの測定法があることが分かっている場合、No informationとする。
5.3 評価される数値結果は、結果に基づいて、多数のデータ解析から選択された可能性があるか?
特定のアウトカムが複数の方法で解析される場合がある。例えば、未調整のモデルと調整されたモデル;最小測定値とベースラインとの差と共分散分析;変数の変換;コンポジットアウトカムの構成の違い(例えば腫瘍有害事象);異なるカットオフ値による連続変数の名義変数への変換;調整に用いられた共変量が異なる;欠損データに対する異なる戦略や補完法。
複数の方法が用いられる場合一つのアウトカムに対して異なる効果推定値が生成される。それらの中から(統計学的な有意差に基づいて)一つの結果だけを報告している場合、バイアスリスクは高くなる。
ただし、考慮すべき結果は、レビュアが解析対象としようとするに限られる。例えば、介入後の値を統合しようとする場合、研究で前後の差も報告されていたとしても、それを問題にする必要はない。
研究プロトコールで設定されていた測定や分析の計画と実際の結果の報告を比較し、特定のアウトカムを複数の方法で解析して、結果によって報告の選択が行われ、(正当な説明がなく)それらの一部しか報告されていない場合YesまたはProbably yesとする。結果の目新しさ、インパクト、研究者の仮説に適合するといった理由で報告する結果が選択されこと起きる。研究者の思い込み、利益相反が影響して、都合のいい解析結果だけが報告されることがある。
企図されたすべてのアウトカムに対する結果とすべての解析が報告されていれば、NoまたはProbably noとする。
解析の企図が不明、あるいは、解析の企図の記述が不十分で、いくつかの解析方法があることが分かっている場合、No informationとする。